街のひとつの歩き方(6)

翌日の夕食から何回かカルチョフィを試みた。ローマ風は煮しめたもの、ユダヤ風は揚げたもの。得体の知れない食べ物だ。ローマでこの季節一番美味しい料理だという感覚を得るため、ローマ市内の旧ゲットー地区にあるユダヤ人のレストラン[1]にも行った。町にあるトラットリアの軒先にアーティチョークが植えてある。つぼみの季節に本格的なユダヤ風とローマ風を出してくれた。日本の竹の子料理に近い。いまだ、外側はどこまで食べるべきなのかわからない。でも慣れてくると案外美味しい。ユダヤ風のほうが香ばしい。

 

シチリア人はひとなつっこい。夏のパレルモを歩いている時に、男性が話しかけてきた。衣服関係の仕事をして、今は引退暮らし。仕事で日本に行ったこともあるという。パレルモの美しさ、人の優しいこと、ワイン、アランチーニ[2]、デザートのカンノーロ[3]と宣伝を十二分にした後、お別れにと妻と娘の頬に随分長く抱擁した。長話と女性への抱擁はシチリア男の健康長寿法に違いない。

 

[1] Giggetto al Portico d'Ottavia

[2] ライスコロッケ

[3] カンノーロは映画ゴッドファーザーで、裏切り者の殺害の後、一緒にいた仲間に「銃は置いていけ。(一息して)カンノーリは持ってきてくれ。 (Leave the gun。 Take the cannoli。) 」というセリフで有名になった。ゴッドファーザー PART IIIでは、劇場で敵方のドンを毒殺するに使われているウィキペディア