街のひとつの歩き方(15)

覚めると、カプリ島が眼に入った。翡翠色の海に沢山の小舟が浮かぶ。港の彩のある街並み。岩肌のみえる山の中腹に緑に囲まれて点在する白い家々。紺碧。港からホテルのある街までは、ケーブルカーに乗るか、タクシーを使うか、坂道を登るかだ。前もってホテルから「トランクは案内人に渡せば、ホテルまで運ぶ[1]」とのメールを受け取っていた。昔の日本の温泉の駅のようなイメージで、ホテルの旗を探した。それらしきものはない。トランクを持ち、埠頭の出口の方に向かう。すると、NHKふれあい街歩きで顔を覚えていた案内人がいた。他のホテルの案内人だったが、声をかけると,我々の案内人を探してくれた。早々番組で得た知識が役立った。トランクを渡し、埠頭を出た。ケーブルカーには行列ができている。オープンカーのタクシーも数台並んでいたが、とりあえず、バーの外の席に座り、ワインを頼んだ。いちご色の発泡ワインと皿に盛った新鮮ないちごが出た。ほっとして、乾杯した。知らない街に着いた時のこの最初の一杯が旅行の最も楽しい瞬間かもしれない。

 

[1] 一個につき12ユーロ